コラム:「ヴィーガン」は日本国内でも一大市場へとなり得るのか(後編)

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コラム:「ヴィーガン」は日本国内でも一大市場へとなり得るのか(前編)

 

国内のヴィーガン市場はインバウンド需要に比例する

政府は2020年の訪日外国人旅行客数目標として4,000万人を掲げていますが、近年はその目標達成にはずみが付くような、目を見張るほどの伸び率を維持しています。

そのような情勢のもと、観光庁によると、2018年に訪日外国人が旅行中の飲食に費やした累計金額は約9,783億円に及ぶそうです。

また、多言語レストラン紹介サイト「Vegewel」を運営しているフレンバシー社の調査では、日本へのインバウンド客のうち4.7%が「ヴィーガン」および「ベジタリアン」であると推計されています。

これらのデータを組み合わせると、「海外在住のヴィーガン・ベジタリアンが日本で飲食した金額」は年間約460億円に上ると推測できます。比較対象として、近年大きく伸びた機能性表示食品の市場規模が年間約1,900億円であり、訪日外国人旅行客数、ヴィーガン人口ともに著しい増加傾向であることを踏まえると、460億円という金額はもはや見過ごすことはできません。

 

ターゲットをヴィーガンに絞った商品戦略とは

これらのデータから、国内におけるヴィーガン市場は今後拡大していく可能性が高いと言えますが、その中でも多くの割合を「訪日外国人旅行客」が占めていることをよく理解したうえでの商品戦略が必要です。言語はもちろん、味の好みや文化の違いなど、幅広い視点での研究が必要になるでしょう。

また、「ヴィーガンではない人間」がヴィーガンに向けた商品を開発するにあたって、例えば「動物性さえ使っていなければいい」「肉を食べないのになぜ肉に似せたいのか」といった程度の認識で取り組んでしまうと、ヴィーガンの方々が本当に求めているような商品に辿り着くことは難しいでしょう。

ヴィーガンの方にとっては、「動物愛護などの自身の思想を大切にしたうえで、美味しいものを食べたい」という前提条件であることを尊重するべきです。

オーガニックや健康食品などを含む「ひと手間掛けた商品」は、その分価格も高くなりがちですが、一方で近年は食品表示法の改正やグローバルGAPの取得推進、HACCPの義務化といった「食の安全」への関心が非常に高まっています。

そのような背景も後押しして、「添加物や動物性の食材を使わずとも美味しくするために、製法や原材料にこだわっている」などといったストーリー性を有している商品に対して、以前よりも「その手間や価値に見合った値段であるべき」といった理解を得られる環境が整っているのではないでしょうか。

「業界唯一」という強み「ヴィーガンヌードル」

この度ヤマダイ株式会社が販売を開始した「ヴィーガンヌードル 担々麺」、「ヴィーガンヌードル 酸辣湯麺」(いずれも税別190円)は、まさに前述したような戦略上の要点を押さえている商品です。

出典:ヤマダイ株式会社

 

商品名や説明文、調理法に英字表記を加えたことで、外国の方でも商品の特色を理解しやすくなっています。また、カップ麺業界でも唯一の「動物性食材不使用、化学調味料不使用、アルコール不使用」という特徴は、やはり大きな強みです。

食品を日持ちさせるためによく使われるアルコール製剤すら不使用にしたことで、さらなる効果が生まれます。それは、「ムスリム」の方々も食べることができるということです。

イスラム教では「ハラール」と呼ばれる判断基準に適さないものは食べられず、アルコールも口にすることができません。

訪日ムスリム旅行客数は2020年に140万人を突破すると見込まれており、これは訪日ヴィーガン旅行客数と同等の数値です。ヴィーガン市場や日本人の健康食品市場のみならず、ハラール市場にも参入できることで、より多くの売上に繋がることが期待されます。

美味しさを追求してノンフライ麺に変更するなどのリニューアルも複数回重ねており、実は前身の商品でさえ、既に多くの国への輸出実績があるほど注目を浴びています。今回初めて商品名に「VEGAN」を冠したことで、海外からのさらに大きな需要も見込めるでしょう。

東京オリンピックの開催を控え、訪日外国人数はピークを迎えます。日本国内のヴィーガン市場も活気づくことが予想されますが、ヴィーガンに対応している商品や飲食店はまだまだ広く行き渡ってはおらず、特に地方にはその傾向が強く見られます。日本を訪れたヴィーガンが、食べられるものを探して何店舗も回らなければいけないような状況は避けたいものです。

ヴィーガン専用に開発したものではなく既存の商品であっても、その基準を満たしているものはたくさん存在します。拡大傾向の市場であるということは、商品の表示を改め、SNSなどを用いた情報発信の方法を工夫することで、売上が向上する可能性を十分に秘めているということです。

またとない機会を損失することの無いよう、柔軟に対応できる体制を整えておく必要があるでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

ハシゴダカ@6次産業化ライター

庄内町立谷沢地区へ移住し「食」と「農」を軸に活動する地域おこし協力隊。 共同利用食品加工場「タチラボ」にて、生産者様の加工食品開発・販路拡大などをサポート。 複業:フリーランスでWebライティング / 動画編集 / 「立谷沢山の芋」農家 / 燻製加工食品製造 などのパラレルワーク。 趣味は家庭菜園。