日本では10年ほど前まで、菜食主義者を指す言葉として「ベジタリアン」が一般的に広まっていましたが、
近年は「完全菜食主義者」を意味する「ヴィーガン」という単語を耳にする機会が増えました。
ヴィーガン発祥の地、イギリスにおける2018年時点での「ヴィーガン」の割合は、
全人口の約1%、およそ60万人程度に留まるものの、
そのうち42%が「1年以内にヴィーガンへと切り替えたばかり」であるという調査結果があり、
今まさにヴィーガン人口は急増していると言えます。
このような動きは、日本国内においても一大市場の形成へと繋がっていくのでしょうか?
※こちらの記事は、アイデアスプーン様に寄稿させていただいた記事の再編集版です。
ヴィーガンの定義と現況
そもそも「ヴィーガン」という位置づけが誕生したのは、1944年のことです。
元は、「ベジタリアンの中でも卵・牛乳・チーズといった乳製品も食べない」という人々を指す言葉として、
一般的なベジタリアンと区別するために使われるようになりました。
現代においてもヴィーガンは「狭義のベジタリアン」に分類されます。
原則的には食事にとどまらず
「生活全てから動物由来のものを排除し、動物を搾取することなく生きるべき」
という思想のもとで生活を営んでいる人たちのことを定義しています。
ヴィーガンにはこのように動物愛護の精神が根付いており、
これこそが健康志向を根底とするベジタリアンとの明確な違いとなっています。

ヴィーガンの食事における課題としては、
ビタミンやミネラルは野菜から多量に摂取できるものの、動物由来食材の完全な排除により動物性タンパク質を摂取することが
まったくもってできなくなってしまうという点が挙げられます。
人間の身体に欠かせない栄養素であるタンパク質が不足すると、
肌や髪のトラブルだけでなく、免疫力も低下するなど、様々な身体機能に悪影響をもたらします。
そこで動物性タンパク質に代わって摂取する必要があるのは、植物性タンパク質です。
植物性タンパク質は米類やブロッコリー等の野菜にも含まれていますが、
豆類やナッツ類には特に多く含まれており、それらを上手く用いて栄養バランスを整えることが重要になります。
よって、日々の食事に取り入れやすい「大豆ミート」などに代表される、
ヴィーガン向けの加工食品が注目されているのです。
世界と日本、それぞれのヴィーガン市場動向

世界全体でのヴィーガン向け加工食品市場は拡大を続けており、
既に全世界では1兆円を超えるほどの大きなマーケットであると試算されています。
一方国内に目を向けると、日本人のヴィーガンも確かに存在しますが、
海外と比較するとまだあまり浸透していないというのが実情です。
その理由の一つとして、日本人はヴィーガンを「美容」「健康」「流行」などとカテゴライズしてしまう傾向があり、
「動物愛護」「ライフスタイル」といった文化的要素が強い本来のヴィーガンとは、
異なる捉え方をしているのではないかと考えられます。
同じような見方で広まったものとしては、
「プチ断食」「精進料理ダイエット」などが挙げられます。
日本人にはヴィーガンもひとつの「健康法」として、
よりライトに実践する「週末ヴィーガン」のような形で普及していくのかもしれません。
それならば、日本国内でのヴィーガン市場の拡大はあまり見込めないのかというと、必ずしもそうとは限りません。
その鍵は、近年増加し続ける「訪日外国人旅行客」が握っているのです。
後編につづく。