こんにちは!まちおこしライターのハシゴダカ(@hashigodaka_com)です!
前回に引き続き、香港への食品輸出の現況を読み解いていきたいと思います。
前回の記事はこちらから↓
前編では、
農林水産物・食品の輸出額第1位が香港である理由として、
「検疫条件のハードルが最も低い国の中で、最も日本との地理的優位性を有している」
という特徴が挙げられました。
今回は更に細かな部分を掘り下げ、
香港の方々の所得や税金、消費の動向などについてご紹介します。
香港の所得水準と税金
まず、我々日本人は、
「香港にはお金持ちがとても多い」
という事実を正確に認識しなければなりません。
以下のように、「超富裕層」が最も多い街であるという記事もありました。
超富裕層が多い街ランキング、NYが香港に抜かれる-Bloomberg
ニューヨークや東京を抜いて、
最も多くの超富裕層(資産3,000万ドル以上)が香港に住んでいます。
一方、米中貿易摩擦や中国経済の減速、デモの長期化などに影響を受け、
GDPの成長率は鈍化しているという側面も持ち合わせています。
香港を取り巻く経済情勢は常に大きく変化し、
所得格差が広がっている環境とも言えるでしょう。
魅力的な低税率
香港に高額所得者が多い理由のひとつとしては、
「税金が群を抜いて安い」
という条件が挙げられます。

出典:大人の相続
こちらの表は、各国の税率を表しています。
見ての通り、あらゆる種類の税で低税率、もしくは非課税を実現しており、
国民にとって、日本と比較すると数多くのアドバンテージを有しています。
これらの要因としては、
低税率を掲げて世界中から企業を誘致し、発展を遂げてきたという背景があります。
また、このように経済成長を最優先にしてきた結果、
社会保障は最低限まで切り詰められており、
前述したように、貧富の差がはっきりと表れているという現実も見なければなりません。
いずれにせよ、「超富裕層」にとっての香港は非常に条件の良い環境であり、
その存在がそのまま、日本との貿易額の底上げに繋がっていると思われます。
中国本土から香港への旅行客
香港において日本の農林水産物や食品の消費が多い理由は他にもあります。
2018年度の香港への訪問者数6,514万人のうち、
中国人が5,103万人と、なんと全体の8割近くを占めています。
前編で述べた検疫条件などの理由によって、
日本産の農林水産物が手に入りにくい中国の人々にとっては、
香港は自国よりも日本食を手に入れたり、食したりしやすい場所でもあるのです。
つまり、香港に輸出された日本の農林水産物は、
間接的に中国人にも多く消費されていると推察されます。
香港から日本への旅行客
舞台を日本に移し、国別の訪日外国人客数を見てみると、
香港は中国・韓国・台湾に次ぐ第4位です。
しかし、人口比での訪日経験者率は香港がダントツの1位です。
また、リピーター率や日本での消費額も極めて高いです。
訪日香港人について調べると、下記に引用したような記事がたくさん出てきます。
インバウンドの香港市場はリピーター率86.1%、伸びる飲食消費
京都市観光協会の分析によると、香港は人口の5人に1人が日本を訪れており、リピーター率も86.1%であることが明らかになりました。
訪日旅行で1泊1人あたりの消費額は24,517円と、全国籍で最も高くなっています。消費項目別に見ると、宿泊料金・飲食費・交通費・娯楽サービス費・買い物代と全てにおいて4位以内に入っており、各業界に満遍なく好影響を与えていると言えるでしょう。
特に前年からの伸びが顕著なのが飲食費です。2017年から2018年は約3割の伸びを記録しています。
観光庁が実施した消費動向調査でも、「次回の訪日でしたいこと」の回答として、香港人の61.1%が「日本食を食べること」を挙げたことから、リピーター獲得において、日本食に関する情報発信と受け入れ態勢整備が1つの鍵となるでしょう。
リピーター率が高いだけでなく、訪日旅行の消費額が1泊あたりでもっとも高いといった好条件の香港は、インバウンド誘客で必見の市場であると言えます。
出典:訪日ラボ
リピーター率に関しては、なんと10回以上日本に訪れたことがある香港人が
全人口の2割に及ぶという調査結果もあるそうです。
そして先述の引用記事でも扱われているように、
日本に訪れる香港人は、「爆買い」のような「モノ消費」よりも、
食事や体験にお金を落とす「コト消費」を好むという特徴が見られます。
これまでに重ねてきた日本への渡航経験が、
日本食を好むという下地を形成していることが改めて分かりました。
余談ですが、香港の方々の傾向としては、
日本の東北地方のような濃いめ・しょっぱめの味付けよりも、
関西風の薄味が好まれるそうです。
まとめ
このように、様々なデータを繋ぎ合わせることで、
人口だけでは見えない、細かな背景や消費の動向を把握することができました。
これらの要件が複合的に絡み合い、
香港への多大な輸出額に繋がっています。
もちろんマーケットが大きい分、日本の企業や自治体同士での競合も多く見られます。
また、供給が過大になると買い手市場になってしまい、値下げありきでの交渉になりがちです。
自信を持って紹介できる商品でなければ、あっという間に淘汰されてしまいます。
自身が扱う商品については、素材の魅力、製造の工夫、独自のこだわり…など、
ストーリー性をしっかりと伝えて信用を得なければいけません。
日本の人口が減りゆく中、
どんな業界においても「海外進出」について検討する機会は
これからますます増えるのではないでしょうか。
その際は表立って見えるデータだけで相手国を判断せずに、
その裏にある要因をひとつひとつ研究することで、
具体的な戦略に結びつけましょう。